別れたあの日から、一夜に会いたくて、思い出しては、泣いてばかりだった。


今の私は、最近警察学校を卒業し、警察官になり、Y警察署地域課交番勤務。


本当は、警察官になりたいとかなんの情熱もなく、選んだ職業。


お父さんや昌也が警察官だから、身近に感じ、選んだ。


公務員だし、いいかって。


そんな私だったけど、一夜と別れてからは、警察官になりたいと強く思った。


警察官になりたくてもなれなかった、一夜の分も。


10月5日。

今日は私の23歳の誕生日。

一夜との、約束の日。


今日は非番で、朝自宅に帰ってから寝たら、起きたら夕方近かった。


そこから、ずっと、行くか行かないかギリギリ迄迷っていて。

一夜に会いたい気持ちが抑えきれず、自宅を出た。


電車に乗り、S 町駅で降りる。


腕時計を見ると、23時38分。



今夜、一夜に会えたら、

"一緒に全てを捨てて、
二人で何処かに行こう?"


そう言うつもり。


駆け落ちの、誘い。


今夜迷っていたのは、一夜に会うか会わないかじゃなく、
私が全てを捨てる覚悟があるか、どうか。


一夜の分も、立派な警察官になりたいと思う気持ちは本当だけど、
それも、捨てる。


全てを捨てて、一夜とこれからの人生を生きて行きたい。


あれから8ヶ月も一夜に会っていないのに、どうしてこんなにも一夜が好きなんだろうか。


私は一夜以上に、欲しいものなんてない。