自分が誰かに悪く言われているという妄想を抱いた少女は、さらに学校からは足が遠のいた。
 家族から学校に行くよう促されると、必死で抵抗した。
 このときだけ、少女の中に飼われている怪獣が姿を現す。
 少女は理性を失い、動物のように部屋中を駆け回る。
 また、言葉にならない言葉で何かを訴えようと(うめ)く。
 ひと暴れすると、疲れた怪獣は眠る。
 怪獣が眠ると、少女の中に人間が戻ってくる。
 人間が持ち、怪獣が持ちえないもの──常識である。
 少女は我に返る。
 何をしていたのだろうか、と。
 そして、また自分が暴れたことを後悔し自責する。
 人でなしだ。
 生きている価値がない。
 自責は、激化すると自傷に変わる。
 自分の拳で自分を殴る。
 壁に思い切り頭をぶつける。
 眩暈(めまい)がしても、皮膚が切れても止めることはない。