少女はまたしても不登校になった。
 この時から、少女は家どころか自分の部屋からすらも出なくなり、一日を布団の上で過ごすことになる。
 近所の中学校の予鈴が聞こえる。
 少女は朝食を食べなかった。
 子供たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
 少女は昼食を食べなかった。
 吹奏楽部の練習や、野球部の掛け声が聞こえる。
 少女は夕食を食べなかった。
 どんなにお腹が空いていても、少女は一切を口にしなかった。
 驚くことに、二日ほどであれば人間は何も食べなくともいくらか健康ではいられる。
 案外人間も丈夫にできているではないか、彼女はそう思った。
 この頃、お腹が鳴ることや空腹感を感じることに、妙な心地よさを覚えていた。
 しかし、どれだけ身体が空腹を訴えても、彼女の頭がそれを無視した。
 もはや、食欲などはとうにない状況であった。