「ねえ、あんたがあの子をいじめてるんでしょ!さっさと白状しなさいよ」
 「だから、私は何もしてないって、やめてよ」
 少女は、大きな書架にガタン、と背が当たるまでに追い詰められていた。
 「もうこっちは分かってるんだから、早く認めたらどう?ね?あんたがやったんでしょ!」
 「どうして私がそんなこと言われなくちゃいけないの?」
 「そんなの、あんたがやったからに決まってるじゃない。ね?そうだよね?」
 少女の目の前にいるのは、彼女の同級生。さらに、その同級生を囲むように数人の女子がいる。
 「そうだそうだ!」
 小学校五年の少女がいじめを確信したのはこの時からである。
 少女は小学校五年の春までは校区指定の学校に通っていたが、部内で先輩からいじめられたことや当時の担任の教師が時々授業を放棄することがあったために勉強に集中できなかったことが原因で、転校を決意した。
 転校先は、とある女子校だった。
 はじめは転校生ということで物珍しがられたこともあり友達が増えたが、いつしか、彼女がクラスメイトをいじめているという噂が立ち、彼女が自分のいじめられていることを自覚したのと同じ時期に、ある噂が流れた。
 「あの子、前の学校で物凄いいじめっ子で、それで学校に居場所がなくなって転校してきたらしいよ」
 「あ〜、最近、あの子がクラスでいじめしてるって聞いたことあるけど、それだったら納得だな〜」
 少女は転校前の学校でも、転入後の学校でも、誰一人として他人を(いじ)めたり(おとし)めたりすることはなかった。それよりもむしろ、気さくで積極的に色々な人と話すような、無邪気な人物であった。