高校三年生は大学受験にひた走るばかりで、いよいよ不登校という段ではなかった。
 そのこともあって少女は、高校三年生の一年間は病欠以外で一度も学校を休まなかった。
 あっという間に過ぎた一年間の終わりに、少女は母から思わぬことを告げられる。
 (私は……誰もいじめていなかった……?)
 ──少女はこの時初めて、真実を知った。
 少女は誰もいじめていなかったのである。
 少女はあの彼女を(ののし)った同級生から濡れ衣を着せられていたに過ぎず、被害者だったのだ。
 涙をボロボロと流す少女は、母に訪ねた。
 「私は……誰もいじめていないの?いい子だったの?」
 母は大きく頷いた。
 「そうよ、あなたは全く悪くない。それでも、あなたはあなたをいじめた子の話を信じて自分を責め続けていたのね……辛かったね。お母さん、そこまで気づいてあげられなかった……ごめんね」
 「ううん、ほんとうのこと、教えてくれてありがとう。私、ずっと私が誰かのことをいじめていたんだと思って、ずっとその人に申し訳ないと思っていたの……まあ、実際にそんな人はいなかったんだけれど」
 少女の中に住んでいた怪獣は、ボウっと空に消えた。