ある日の少女は、精神科にいた。
 中学二年の少女は以前よりもさらに学校から足が遠のいていた。
 中学一年で名簿上登録し春の間だけ通っていた部活も退部に追い込まれている。
 まだ若い娘に薬を飲むことで精神をコントロールさせることを良く思わなかった母は、薬を処方しないという前提条件を出し、少女をクリニックへ引き連れた。
 結果的には、ただ話を聞かれて終わりであった。
 少女には特に何も感じられなかった。
 しかし、次の行き先で少女は幾分か心の調子を取り戻し始める。
 それは、広義で医療に含まれるカイロプラクティックであった。
 脊椎徒手療法(せきついとしゅりょうほう)と呼ばれるそれは、米国などで主流の近骨格系医療であり、歪んだ関節や脊椎を元の位置に戻す徒手治療によって神経系の働きを抑え生理学的変化を起こすことで症状を鎮静化させようとするものである。
 少女の躁鬱もカイロプラクティックによってほんの少しだが回復し、次第に学校に通うことができるようになってきた。
 初めは別室登校、それに慣れたら午前あるいは午後だけ教室で残りは別室。そのようにして少しずつ学校や教室に慣れるように努めた。