「……!」
 少女には頻繁に見る夢があった。
 静かな空間の中で目を開けると、どこまでも続くような美しい空が目前に広がる。
 薄い青の空には雲ひとつなく、ほんの少しの心地良い風が吹いている。
 少女は箱のようなものの中に入っている。
 少し目を凝らすと、どうやらここは花園のようで、青々とした芝に色とりどりの無数の花が散りばめられている。
 その花は少女の入っている箱の中にもある。
 一体ここは何処なのだろうか、そう思いながら空を眺めているとヌッと現れた何かの影ができた。
 視界いっぱいの空を塞ぐように現れたのは、天使である。
 その天使は、ニタアと笑いながら少女の入っている箱の中に液体を流し込み始めた。
 天使の目は光を吸収するかのように真っ黒で、一切の笑みもない。
 初めは何が起きているのか分からないのだが、液体が下半身を満たしたところで少女は悟る。
 セメントで埋められている、と。
 液体だったはずのものはカチコチに固まり始め、下半身は微動だにしない。
 石のような重みさえ感じ始める。
 (……やめて、やめて!)
 胸のほうまでセメントが上がってくるのを感じた少女は液体を流し込むのをやめるよう天使に目で訴える。
 しかし、天使は以前よりもさらにニタアと不気味な笑みを浮かべ、ゆっくりと液体を箱に流し入れる。
 (もう完全に埋まってしまう……!)
 セメントは少女の顎まで迫る。依然として天使はニタアと笑っている。
 そうして顔が覆い尽くされようとするところで少女は決まって目を覚ますのだった。
 この不気味な夢を何度も見続けるのである。