京都鴨川まねき亭~化け猫さまの愛され仮嫁~

「お騒がせなやつらだな」

 ふたりが出て行った戸口を見ながら千里がつぶやく。

「まあこれで徳々ポイントダブルだから結果オーライってやつだな」
「は?」

 なにが『結果オーライ』だというのだろう。スーパーのお得セールのようなネーミングも手伝って、いったいどこからつっこんでいいのか迷ってしまう。

 すると千里は、今回は一気にふたつの徳を積めたのだと言った。

 ひとつは家出の白ウサギを泊めてあげたこと。
 そしてもうひとつは、夫ウサギに頼まれてアリスのところまで連れて行ってやったことだそう。

 璃世とアリスが出かけた後しばらくして、夫ウサギが千里のもとを訪ねて来た。まねき亭の店主に、妻の居場所を探してもらおうと。

 その頼みを聞いて夫ウサギを無事妻のもとへ届けた千里は、そこで璃世が迷子になっていることを知った。アリスが通って来た道のことを聞きこれはまずいと探しに向かい、今に至る。

「ところでなにを貰ったんだ?」

 言いながら千里が璃世の手元をのぞきこんできた。すぐに「お!」と嬉しそうな声を上げる。

「出町柳の豆大福じゃないか」

 璃世が首をかしげると、いつも行列ができる人気店のものだと言う。

 わざわざ並んで買ってきてくれるなんていいところあるじゃないか、あのウサギ夫婦。
 そんなふうに思いながら袋の中身を眺めていたら、パックの下になにかあることに気がついた。小さな紙の袋だ。

「なにこれ……」

 中身を取り出した瞬間、絶句した璃世。反対に千里は「ふはっ」と吹き出した。

「気が利くじゃねぇか、あの白ウサ」

 千里がおかしそうに言う。璃世の手の中にあるのは、『縁結守』と書かれた桃色お守りだ。二羽の白ウサギも描かれている。