「――世紀後半、隋の文帝は――――」




関わらないようにすると言った手前、あまり見ないようにしていたのだけど、ふと視線を上げると黒羽くんと目が合ってびっくりする。

授業中に目が合うとは思わなかった。


その上、黒羽くんは床に視線を落として、わたしの消しゴムを拾ってくれた。




「……」




無言で手を伸ばす黒羽くんの姿に少し驚きつつ、笑顔で消しゴムを受け取って、ありがとう、と口パクで伝える。

それにコク、と頷いてくれたのも嬉しくて、授業中なのにわたしはニコニコと笑ってしまった。


やっぱり、黒羽くんって優しいんだ。




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「黒羽くん、さっきはありがとう」