「黒羽くん、急ごう!」


「あぁ……」




わたし達は早足で教室に戻り、何とか担任の先生が来る前に席に着くと、約束通り、それから言葉を交わさないようにした。




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「これらの国々は――――、そして勢力の拡大を――――」




サクサクと進む解説をノートに書き留め、教科書と黒板を忙しなく目で行き来する。

ここで集中力が欠けたらどんどん追いつけなくなるからか、教室内はしん、として、先生の声がよく響いていた。




「ぁっ……」




左のページが埋まってノートを横にズラすと、存在を忘れていた消しゴムに手が当たってしまう。

机から落ち、床の上を転がっていくそれを目で追うと、黒羽くんの足元を潜って向こう側まで行ってしまった。


あれは、諦めるしかないかなぁ……。