「喧嘩していた。近くにはいるから、すぐに合流する」
〈分かった。それじゃあもう少し待ってるね、総長〉
「あぁ――」
「――皇輝?」
前から聞こえた声に、皇輝はビクリと肩を震わせた。
驚きと、怯みが混じった視線が捉えたのは、ピッチリとしたスーツ姿の神経質そうな男性。
「父、さん……」
「……こんな時間に、こんな場所で何をしている? まさか、遊び呆けているのではないだろうな」
「っ……」
〈皇輝? もしもし、どうしたの?〉
皇輝は後ずさりながらスマートフォンの電源を切り、動揺が浮かぶ顔を下に向ける。
緊張で強ばった体は、近づいてくる父親から逃げることを許さなかった。