「ね、苑香(そのか)はどっちに心が傾いてるの?」


「わ、わたし? えぇと……」


「あたし生徒会の友達から聞いたんだけど、逢見くんとの仲は副会長公認なんだって!?」


「こ、公認!? そんなことは……」




ないと思うけど、と言う前に、教室に戻ってきた黒羽くんを見つけて、「あ、黒羽くん」と顔を上げる。

お話が聞こえていたのか、黒羽くんはどこか呆気に取られたような様子でわたし達をじーっと見ていた。




「はっ……そ、それじゃあ」


「「「ごゆっくり〜」」」




みんなはニコニコ笑って、サーッと離れていく。

最近はこういう流れも増えたなぁと思いつつ、わたしはとりあえず微笑んだ。




「お帰り」


「……ただいま。……(よう)先輩?」




黒羽くんは席に座りながら、捨てられた子猫のような目をして尋ねる。