──ガチャッ!
「もう! 千紗ちゃん、なんで下におりてこないの!? せっかく朔くんがカバン届けてくれたのに」
しばらくして、怒った顔のお母さんが私の部屋へと入ってきた。
「朔くん、お母さんにカバン渡してすぐに帰っちゃったわ。ねぇ、今までの千紗ちゃんなら朔くんがウチに来たら、真っ先に会いに行ってたのに……どうしたの? もしかして、ケンカでもした?」
うっ。さすがお母さん、そういうところ鋭い……。
「本当に朔くんとケンカしちゃったのなら、早く仲直りしなさいよ?」
そう言ってお母さんは、私にスクールバッグを押しつけると1階へとおりて行った。
朔。私のスクールバッグ、持って帰ってきてくれたんだ。やっぱり、優しい。
だけど、朔のその優しさが今の私には辛い。
私は、朔が届けてくれたスクールバッグをぎゅっと抱きしめる。
さっきお母さんに、朔と仲直りするように言われたけど……。
朔には、好きな子がいる。
そして尚且つ、私のことを『好きじゃない』って朔が言ってるのを聞いてしまった以上、今までみたいな “ ただの幼なじみ ”の関係には、もう戻れないかもしれない。