「好きな子、ねぇ。そりゃあ中学生なんだから。安東くんも、好きな子の1人や2人くらいいるでしょう」
「朔に好きな子が2人もいたらヤダ」
「まっ、まぁ。さすがの安東くんも、それはないだろうけど……」
「でも、誰なんだろう? 朔の好きな女の子。私……なわけないか」
私は、自分の机に突っ伏す。
もし朔の好きな子が私だったなら、『教室で話しかけるな』とか、そんなことは言わないはずだし。
だって、好きな子に話しかけてもらえたら普通は嬉しいじゃない?
私だったら、飛び跳ねちゃうくらい嬉しいのに。
だからやっぱり、違う子なのかなって。
「さぁさぁ! 千紗もいつまでも落ち込んでいないで! 図書室で借りてた本、今日中に返さなきゃいけないんでしょう? ほら、図書室行くよっ!」
マコちゃんが、自分の席に座っている私の腕をガシッと掴む。
「待って、マコちゃん」
「よーし。図書室まで、どっちが早く着けるか競走ね! 負けたほうがジュース奢るってことで」
「えっ、急に何!?」
「行くよぉ、よーいドンッ!」
戸惑う私を置いて走り出すマコちゃんに続いて、私も走り出した。