「ねぇ、朔。待ってよ」
廊下の先を歩いていた朔が足を止め、こちらを振り返る。
「……何?」
朔と目が合い、ドキリとする。
「あの……さっきは、ありがとう」
「……別に。あれは、千紗のためにやったわけじゃねぇし。西山を見てて、ムカついたから」
それだけ言うと、朔はまた廊下を歩いていく。
「私のためじゃなくても……ありがとう。おかげでちょっとスッキリした」
私の言葉を聞いてか、朔が右の拳を宙へと上げた。
朔……。
私は、彼の後ろ姿を見つめる。
朔は、やっぱりかっこいい。
相手の胸ぐらを掴むのは、良くないことだったかもしれないけど……。
朔が西山くんに強く言ってくれて、なんだか胸がスカッとした。
「あっ、そうだ」
朔が立ち止まり、顔だけこちらを向く。
「ひとつ、言い忘れてた」



