雷鳴に閉じ込められて

タケミカはフツノミタマノツルギを手に取り、構える。フツノミタマノツルギに雷を纏い、剣が音を立てながら光輝く。何をしようとしているのか萌黄が理解した瞬間、鳥居の前に父が姿を見せる。

「タケミカ様、やめて!!」

萌黄が叫んだ瞬間、目の前からタケミカの姿が消えた。そして、鳥居の前にいた父の体から血が激しく飛び散る。その横には、甲冑に返り血を浴びたタケミカが父の遺体を見下ろしている。彼は一瞬で父を殺害したのだ。

「お父様!」

萌黄が父の元へ駆け寄り、その体に触れようとする。だが、タケミカに抱き締められてしまったため、それは叶わなかった。

「放して!!放してください!!」

「そんなもの、触ったら汚いでござるよ」

タケミカがそう言った刹那、灰色の空から大粒の雨が降り注ぐ。降り出した雨は街を濡らし、二人の足元に転がっている父の遺体を濡らし、タケミカと萌黄も濡らしていく。タケミカの腕の中で萌黄は震え、泣いていた。そんな彼女を愛おしげにタケミカは撫でる。

「拙者はもう、お主がいてくれれば何も必要ないようでござる」

空に稲妻が光り、辺りは白に覆われる。それが消えた時、萌黄とタケミカの姿は神社から消えていた。