そして何より、そこで兄がどんな生活をしているのかを妹でありながらよく知らなかった。

それは昔からそう。

いつもお兄ちゃんは周りから作られたイメージどおりに生きていて、本心がどう思っているのかを探る前に完成されている。


しっかり者で優しくて、勇気ある子で。


嫌いなものは?苦手な人は?

そんなふうに改めて聞いたことは、考えてみれば1度もなかった。


それがわたしの双子の兄、水本 爽雨(みずもと そう)だった。



「お母さん、」


「うぁぁぁぁぁ……っ、うそよ、あの子が死ぬわけないじゃない、」


「…お母さん、」


「いやよ……っ!!いやよいやよいやよ…!!ぎゃぁぁあああああ!!!」



それから母の精神は壊れた。

それはそうだ、母にとっても可愛い一人息子だったのだから。

母親は男の子に執着に似た愛情を持ちやすいと、どこかで聞いたことがある。


やっぱり異性は違うのだと。


今だってわたしの顔すら見ず、過去の思い出にすがりつづける惨めな女でしかない。

だけどわたしのことを放っているとか、そういうわけでもなくて。


だけどこの数日間だけはわたしだって放心状態だった。