「お母さんは精神が壊れちゃって、お父さんは出ていっちゃって……わたしも、まだ受け入れられない部分があって、」
だから病院に預かってもらっている。
ベッドのうえに眠る兄を目にする覚悟が、まだわたしには揃っていない。
事故当日のときはさすがに会いに行ったけれど、そのときの記憶もわたしの頭からは半分以上が抜けていた。
「…こんな家族で、妹で…お兄ちゃんきっと悲しんでるよね、」
わかってる、はやく会いに行ってあげなくちゃ。
だけど本当に自殺……?という問題点まで出てきてしまったから。
もしかすると兄の身体は近いうち、原因解明のために解剖ということもされるかもしれない。
「大丈夫だ、あいつはお前のそういう気持ちも分かってるはずだよ」
「……、」
ぽんぽんと、背中が叩かれる。
叩くというよりは撫でるに近いもので、わたしの弱さを支えてくれているみたいだった。
じわっと浮かんだ涙を隠すようにうなずいて、そうすると空気を変えるように兄の親友は言葉を繋げた。
「てか、隠さねぇの」
「え…?」
「俺の隣には今、男の制服着ただけの女がいるけど?」



