それぜったい天国のお兄ちゃんは聞いて怒ってるはず。
わたしや家族の前ではいつも紳士的で優しくて、どの角度から見ても本当に良きお兄ちゃんだったけど。
でも、朱雀に来てから分かったことばかりだ。
兄はそこまで真面目ではなかったこと。
そして真面目じゃないことに、どこか憧れを抱いていたこと。
喧嘩が強い人間に、誰かの上に立つ人間に、ずっとずっと憧れていたんだと。
「じゃあやっぱりわたしのこと…最初から勘づいてたの…?」
「そりゃあ、泣き虫な双子の困り者の妹がいるってしょちゅう聞いてれば」
「……」
もう、お兄ちゃんそんなにわたしに困ってたの…?
たしかに昔から泣いてばかりでいつもお兄ちゃんに助けてもらってたけど…。
「だから一目見てお前が妹だって分かったよ。…あいつが飛び降りたこと、俺の耳だけには入ってたから」
「そう…だったんだ、」
兄弟を失っているのはわたしだけじゃない。
だからこんなにも優しくて穏やかでもあるんだ、きっと。
「……まだ、お葬式もできてないの、」
言葉は返されない、でもそれでよかった。
いちばんわたしがして欲しい反応をしてくれた久遠 綾都。



