それはわたしの斜めうしろの席からの会話。

湯気の立つカップラーメンを食べながら、小さな愚痴をこぼしつつもどこかホッとしていた。


それにしても学校でカップラーメン食べるんだ…。



「覚醒……、」



それってわたしがこの高校に初めて来たときのこと…?

霊池 仁が駆けつけてきて、「赤矢が暴れてる」って。


久遠 綾都も困ったような顔をしていたし、どこかしこからも窓ガラスの割れる音が響いていて。

それはまるでカラスが突撃してきたような、そんなものに似ていた。



「おまえ相っ変わらず真面目なもん食ってどないするん」


「っ……!」


「ここで大人しく弁当広げてんのなんかお前くらいやで?たこ焼きはないん?」



気配を感じなかった。

それどころかひょいっと、背中から奪われた春巻き。



「うまっ」



毎朝お母さんが作ってくれるお弁当を兄はこうして食べていたんだと思うと、どこか幸せな気持ちにもなれて。


そんなお昼休みにて、またもや教室内は静まった。



「やけど、もうちょいしつこい味のほうがオレは好きや」


「…あなた、は、」


「なんや改まって。毒でも飲んだか?」



黒いパーカーの上から黒色に近いブレザーを合わせる様は、黒に黒を光らせるカラスのようで。