「つーか、今日の放課後あけといて」


「え、どうして…?」


「いろいろ説明するから。俺たちのこと」



ね、深雨───と。

耳元いっぱいに甘い声を広げてきたのは、兄の親友だった久遠 綾都だった。



「んじゃ、よろしく」



彼が2年C組を出ていくと、それまで息を殺すように黙っていた男たちは張り詰めていた空気の解放を求めるように深呼吸をし出す。

反乱が起こっているとはいえ、Rain shadowの幹部ふたり相手にはやはりトップ無しでは好きに動けないらしい。


いちばんは確実に前の放送室からの叫びが効果抜群だったみたいで。



「……うそ、でしょ、」



そんなことよりもわたしの頭のなかは混乱だった。


久遠 綾羽は……死んでいる……?


そして久遠 綾羽は、さっきの久遠 綾都のお兄さんだと。

もし本当にそうだったとしたら、わたしがこの高校に来た意味はどこへ行くのだろう。

復讐をする相手はもうとっくに亡くなっていたなんて。



「烏間さん、今日も来なかったなー」


「そりゃ前に覚醒したからな。おかげで窓ガラス全滅してて雨入ってくんだけど」


「あのひと覚醒したら2日は寝込むしな…」