ドタバタと荷物を抱える赤矢。

どうにも深雨が目覚めたら家に遊びにきて、母さん特性のバルサミコ酢を使った料理を食べにくるらしい。


……なんでバルサミコ酢。



「あ、せや」



と、ドアの前。
赤矢は何かを思い出したように止まる。

俺に釘でも刺しておくかの如く眼差しで戻ってきた。



「おまえの嫁は翠加やろ?」


「え?まあ、そうだけど、」


「赤穂はぜってえやらへんからな。赤菜もや」


「は?」



あかほ…?あかな…?

確かそれって、赤矢の妹の名前だったような気がする。



「…赤矢、俺からもひとついいか」


「なんや、こっちは急いでんねん」


「お前さ、深雨のこと好きだったりする?」


「……」



佐狐から聞いた話によると、実は綾羽や瀧と同じくらいお見舞いに行ってるらしい赤矢。

俺のふりをしていた深雨とはクラスメイトとしても仲が良かったらしいから、赤矢も赤矢で気に入ってはいるんだろう。


だからなんか、兄としてちょっと気になった。



「…オレは女には優しいだけや」


「なら別に好きとかではないのか」


「なんつーか、ちょっと後悔してんねん」


「…後悔?」



今では俺の席である机を見つめて、どこか物憂げな表情をしていた。