「うーん、こっち……、いや、やっぱこっちやな」


「なにしてんだ赤矢」



放課後、そいつの机のうえには散らばったマンガ。

よく見てみると、こんな不良高校で誰が読むんだと思ってしまう表紙のものばかりだった。



「本屋で5種類そろえたんや。深雨はどれが好きやと思う?」


「……マンガ朗読は絶対なのか」


「当たり前や!この前なんかちょっと眉が動いたんやで!?あいつちゃんと聞いてんねん!」



パラパラとページを捲っては「うへぇ、甘ったりぃ…」とこぼしつつも、妹のために揃えてくれたらしい少女マンガ。


俺はそこでも小さくお礼を言っておく。

とくに返事はされなかったが、ページを捲るスピードが上がった。


そんなクラスメイトであるRavenの総長とは前よりも良好な関係が築けていた。



「あー、やっぱあれ買っときゃよかったわ…」


「あれって?」


「女たちが今いちばん人気って騒いどったんがあったんや、そっち買うべきやったか…、」


「いや、深雨はこれでも十分喜ぶと思うけど…」


「あかん!やっぱオレそれ買うてから向かうわ!!あっ、ネタバレしやがったら承知せんで爽雨!!」