「そこまで長くはなかったけど、想像してたよりずっと力のある組織になった。
…それに誰かさんの双子の妹がほんとに反乱を収めてくれるとも予想外」


「…久遠 綾羽は…、あなたの亡くなったお兄さんの名前じゃないの…?」


「はは、そんな男はいねぇかな。適当に作った架空の兄貴で、そもそも俺は一人っ子。
俺だよ、俺が間違いなく久遠 綾羽」



俺は久遠 綾羽を許さない。

あいつが俺を殺したんだ、俺は自殺じゃない、あいつに殺された───。


双子の兄の遺書でもある日記には、確かにそう綴られていた。



「…ほんと似てる。俺の親友に」



そっと頬を撫でられる。

思わず引いてしまった動きを逆に引き寄せるように、わたしが突き出すナイフは久遠くんの腹部に触れた。



「や、やだ……っ、」



そんなのしたくないと、反射的にも一筋、ぽろっと頬に伝ってしまう。



「……なんだよその顔。誘ってんの?」


「───んん…っ!!」



強引に拾われる唇。

ふかく、ふかく、まるで最後とでも言うみたいに合わせられる。



「…こんな軽いキスじゃ俺は殺せねぇって」


「くおん…く…ん…っ、んん…っ、ふっ」



偽りのレヴェル─反逆者─。


つまりそれは、───わたしだ。