わたしは拐われたんだと。
約束を守られず、決戦の2日前にこうして汚い手を使われたんだと。
「…おまえは…僕に何をした、」
「おいおい、まじで記憶ねェの?あれは俺が怖かったから負け犬なりの攻防じゃなかったのかよ」
あなたはかつてお兄ちゃんに何をしたの。
お兄ちゃんの大切な人に、何をしたの。
ねぇ、───鬼木 蛇雄。
「お前がだーいすきだった翠加ちゃんをクスリ漬けにして犯して殴って、気づいたら殺しちまってたわ」
耳に残る言葉は、耳に残ってほしくもない言葉だった。
どうしてそんなことができるんだと。
そんな質問すら、この男には通用しない。
狂ってる、ただそれだけだ。
「それで、俺を殺しにきたお前を返り討ち。泣いてたなァ、悔しかったよなァ、
“どうして俺は頼られないんだ”って、“どうして俺じゃだめなんだ”って、なあ?」
あなたは負け犬じゃないよ、お兄ちゃん。
頼られてた、だめなんかじゃない。
あなたを頼って、あなたのことが大好きで。
もっとちゃんと水本 爽雨という人間を見ておくんだったって、ちゃんと伝えるんだったって。



