やっぱり慣れない…。
お兄ちゃんがこの学校でどんなふうに過ごしていたかを1ミリも知らないわたしは、そのもどかしさに泣きそうになる。
「…頼むから泣くなって。これが男のノリなんだよ」
「…うん、」
ぐっと唇を噛んでどうにか堪える。
そんな姿にまたふっと笑われつつ、ぽんぽんと軽く背中を叩かれた。
そしてわたしは、ふいに顔を上げてしまったのが失敗だった。
「───……、」
世の中にこんなにも近づけない妖艶さと気さくさ、それでいて怖さと優しさを兼ね揃えたオーラのある人はいるんだと。
ルックスはもちろんのこと、声、仕草、表情のひとつひとつ、それはまるで絵画でも見ているような気持ちにさせてくる。
「くおん……、あやと、」
「…ん?なに?」
「な、なんでも…、」
この人が…お兄ちゃんの親友。
その意味が少し分かったような気がした。
あんなにもお兄ちゃんが誰かのことばかり話しているのは珍しいから。
日記だとしても、それまでの毎日は、この久遠 綾都という人との賑やかで楽しそうな時間が綴られていた。



