「あまりジャンクフードばかり食べないようにね。野菜はちゃんと取って」


「わかってるって。母さんもゆっくりしてきて」


「ゆっくりしてきてって…あなたに強引に頼まれたのよ?」


「はは、まぁそうなんだけど、」



大きな旅行ケースを手にした母親は今日から1週間、祖母の家へ向かう。

それを頼んだのは他でもなくわたしだった。


違和感がないように「たまには顔出してきたら?」と提案して、田舎に住むおばあちゃんを心配している良き孫を演じた。


もちろんぜんぶが嘘ではないけれど、本当の理由は他にもいくつか大きなものがある。



「じゃあ行ってくるわね。また着いたらメールするから」


「勉強に集中したいからあまり返せないかもだけど、心配しないで。行ってらっしゃい」



鬼木が率いる鬼神と、わたしたちRain shadowの決闘の日は5日後と迫っていた。

もしかすると家族が狙われるかもしれないから、安全なところに避難させておいたほうがいいと。


そう教えてくれたのは瀧だった。


けれどわたしは、わたしにとってすべての決着は今日だ。