Rain shadow─偽りのレヴェル─





「あれじゃない?翠加とも関わりがあったっぽいから、俺たちと出会う前に仲良かった人とかさ」


「女やったら綾都の彼女ってとこやろな」


「そうだねぇ。…爽雨くんには翠加がいるし」



佐狐 遼成が瞳を伏せるようにつぶやけば、この話は強制的にも終了せざるを得ない。

それは俺たちがぜったい忘れられない記憶。



「…雨、嫌になるくらい止まへんなあ」


「…ほんと、やだね。こんな雨は」



おれは今日のように打ちつける雨の音が嫌いで、声を消してしまう雨の音が嫌いで。

相手の声は聞こえるのに自分の声は一切届いてくれない雨の音が、気持ち悪いくらいに大嫌いだ。



『おい聞いてんのかよ!?返事しろってんだよ…!!なあ!?』


『やめてお母さんっ、お姉ちゃんを蹴らないで…っ!!』


『離れろクソガキ…ッ!テメェはベランダにでも出てろ…!!
こいつがあたしのカネ勝手に盗みやがったからこっちはわざわざ躾てんだよッ!!』



雨の日は決まって母親の機嫌が悪かった。

湿気に混じるアルコールの匂いが部屋を充満させて、中毒状態の母親は八つ当たりのようにおれたち姉弟に暴行を加える。


母親と父親は連れ子がいる再婚同士で、おれが6歳のときに1歳年上の義理の姉ができた。