「迷惑なんかじゃないです、おれは爽雨さんと関わって迷惑なことなんかひとつもないです」


「…うん、ありがとう」


「……」



おれは意識的にも首を傾けて、頭を差し出してしまった。

ん?と、まっすぐ見つめてくれる爽雨さんの目はどこか恥ずかしい。



「ふふっ、瀧ほんとかわいいよ」



わしゃわしゃと触ってくれる動きは、遠慮も加減もなくて。

その力加減が逆に嬉しかったりする。

だからマフラーで口元を隠した。



「…おまえすげー手懐けてるやん。瀧は前っから爽雨にベッタリやったもんな」


「そりゃ瀧がいちばん素直で可愛いし」


「……オレのことも撫でたってええんやで?」


「烏間先輩の髪は刺さるんで危ないです」


「刺さるか!ヘアワックスや!!」



だめだ。

これはおれだけの特権みたいなものにしておきたい。


それはそうと……。



「つーか、ほんまに相っ変わらずうまそうなママの弁当やなあ」


「とか言ってる赤矢だって、最近は赤菜ちゃんの手作り弁当のくせに」


「……こんなん昨夜の残りもん詰めただけや」