ザァァァァァァ───…。

ピカッ、ゴロゴロゴロ───!


激しく打ちつける雨。

明かりの消えた教室では、時折として雷の光に顔の輪郭が映し出される。


次の雷の合図で、いやその次、最終的には雷なんか止めばいいのにと。



「はっ……、はあ…、」



喉が渇く。

こんなに渇いたのは初めてだと思うくらい、喉が渇く。


そこは校舎内の中でも限られた人間しか通ることのできないフロアー。

奥の奥、教師ですら立ち入れないと言われている教室だった。



「…やられた、参った」



震えているわたしの手。
ぎゅっと握り直してもなお、震える。

そんな小柄な男子高校生を見つめる瞳は、一瞬だけ愛しさを含んだようなもので。



「まさかお前だったなんて。…刺せんの?俺を」


「っ……、」


「…刺せるのってか、刺すのか。それしかお前の道はなさそうだし」



そう、刺さなくてはいけない。
そのためにわたしはここまでやってきた。

たとえ目の前に立つ男が、この学校を牛耳る組織の最高司令塔だとしても。


そして、淡い想いのようなものを抱いた相手だとしても。



「そんな顔すんなって、───…深雨(みう)」