全員の視線がノアに集中する。



「毎日毎日、てめえらのしょうもねえ内ゲバや欺瞞、クッソどうでもいい自己顕示欲のために振り回されるこっちの身にもなってみろよ。そりゃあ脱走もしたくなるわ!クソが!!」


ノアが言い返してきたことなんてなかったんだろう。

研究員たちはみんな固まって、目をぱちくりさせていた。

中には図星をつかれて気まずそうにしている人もいる。

ノアの今言ったことは全部、本当のことなんだ。



「てめえらがあまりに知った口利くんじゃねえよ。こいつは、あまりは、世界中の誰よりも俺のことを理解してくれた。嫌いだったアンドロイドを……俺を、人間のようにあつかってくれたんだよ!」


わたしはとっさに唇をかんだ。

そうでもしないと、涙が出てしまいそうだった。


初老の男が、はあ、と額に手をあてる。



「帰ったら人工声帯機能を取り除こう。口は災いの元だ。これには筆記させればいい。そもそも、この個体に言葉なんて要らなかったな。口をひらけばこの通り、汚い言葉しか出てこない。その点では失敗作だった。我々のミスだ……なッ」


「あっ……!」

わたしは思わず声をあげた。


ノアがよろける。

男が手に持っていた革のカバンをノアのこめかみに振り抜いたからだ。