「これは水で洗わなきゃだめね。ほら、おいで」

 シエルが立ち上がると、ミュンは鼻を鳴らしながらついていった。

 木のうろの家のそばにはイルシャが身体を丸めて眠っている。

シエルたちが近づくと、片目だけ開いてから大きなあくびをした。

「イルシャも後でね」

 彼女たち獣の母娘と暮らしてずいぶん経つが、いまだにシエルはこの二匹がどういった獣なのかを知らない。

 セニルースでは魔獣と呼ばれていたのに、リンデンでは聖獣として扱われている。