柳沢くんは笑顔のまましばらく固まった後、ぐいっと私の手を引いた。

そのまま人通りが少ない廊下に出て、壁際に追い詰められる。




「何?何で甚に会いたいわけ?」


「あ、えっと……」


「俺に言えないような理由?」


「う……」




だって……。

柳沢くんはとんっと壁に手をついて、うつむく私に綺麗な顔を近づける。




「柳沢くん、壁ドンってね、場合によっては脅迫罪に問われるんだよ」


「話を逸らさない」


「……べ、勉強を教えてもらえないかなと思ってて」



圧に負けた。

諦めてそう白状すれば、困惑したような「は……?」という声が降ってくる。




「この前なっちゃんが言ってたの。高森くんって、テストでいつも一位なんでしょ?」


「……まあそうだったと思うけど」


「もうすぐ中間テストじゃん?一位の人に勉強見てもらえたら、良い点数取れるようになるかなって」




そうっと顔を上げて柳沢くんを見れば、何やら呆れたような表情をしていた。