よくわからないけど、なっちゃんがうらやましがるということは良い意味なんだろう。


だから「じゃあこれからもずっと清くいないとね」と言えば、何故か柳沢くんは私の両頬を力いっぱいつねってきた。


痛い。何で……。


気が済むまでつねられて痛む頬を押さえる。

そんな私の袖を、柳沢くんはくいっと軽く引いた。




「ほら、そろそろ行こう」


「そうだね。じゃあねバイバイなっちゃん」


「ばいばーい」




なっちゃんに別れを告げて、私は柳沢くんの隣を歩く。

柳沢くんは横目で私を見て大きくため息をついた。




「……ずいぶん楽しそうだね」


「うん!だって今から柳沢くんのお母さんに会えるから!」


「こっちはそれが憂鬱なんだけど」



そう。

今日は柳沢くんの家にお邪魔する約束をしていた。

柳沢くんのお母さんにはこの前会ったけど、ろくに自己紹介もできていなかったし、そもそもあの時点では本格的に付き合ってはいなかったので、改めて挨拶に行きたいと言ったのだ。