やっとわかった。ナンパだこれ。

ナンパされてる女の子を助けたことはあっても、自分がされたのは初めてで気付かなかった。




「あ、大丈夫です。もうすぐ友達が来るので」


「わかりやすい嘘ついて可愛いな~。ほら~別に何もしないって」


「いや本当に来ます!1時から約束してるんです!」


「ふーん。じゃあその友達も一緒でいいから~」




男はそう言って私の手を強い力でつかんできた。

さすがにぞわっと悪寒がする。


今すぐ彼を投げ飛ばして手を振り払うことは簡単。

だけどここは学校。知り合いにその様子を見られるリスクがあまりにも高い。


やっぱちゃんと言葉で説得するしか……




「あの、だから私……!」




その時だった。




「何してるのハス?」


「柳沢くん!」



燕尾服姿のままの柳沢くんが現れ、私と男の間に割り込んだ。

私を守るようにして男を睨みつける。




「なーんだ。友達って男かよ。つまんね」