こいつの声、だよな……。

 信じられなくなるほどの声を出している新。

 俺はその現実を受け止めるのに時間がかかったが、やっとの事で言葉を絞り出すことができた。

「お前が柊木栞か。」

「……っ。」

 俺が言葉を発すると、あからさまに肩を震わせ怖がるような仕草をした柊木。

 まぁ……こうなる事は分かっていた。

 柊木はあの下衆野郎……来栖に玩具にされていたようだから、怖がるのも納得がいく。

 だがな……。

「翔葉、栞を怖がらせるな。それと、栞に近付くなよ。……こいつは信頼できる奴だから安心しろ。だが、こいつが怖いなら帰らせようか?」

 そんな事を言うとは思ってなかった……。

 俺に向かってはドスの利いた声で言うくせに、柊木には甘い声でそんな事を言っている。

 いや、まさか……ここまで惚れ込んでるとは思わなかった……。

 こいつが柊木のことが好きなのは百も承知だが、まさかここまでとは……。

 怖がらせたのは本当だろうが、別に俺的にはどうでもいい。

 俺は元から人と馴れ合うつもりはないし、仲良しごっこをしようだなんて思わないから関係ない。