「栞?」

「……っ、はい……?」

 名前を突然呼ばれてはっと我に返る。

 急いで顔を上げると、目の前にはいつもの学園の校舎が見えた。

 か、考え事しちゃってた……。

「まだ、心配か?」

 しゅんと落ち込んでいる私に新さんが優しく問いかけてくれる。

 し、心配ってわけじゃ……。

 だけど……まだ、少しだけ怖い……かも。

 でも、全然昨日に比べたらマシだから……っ。

「いえ、大丈夫です!」

 心配をかけないように笑顔でそう言い放つ。

 大丈夫だって言葉も嘘じゃないし……私は平気だ。

「本当か?」

「ほ、本当ですよ?」

 怪しそうに見てくる新さんに苦笑いを浮かべながら、はっきりとそう伝える。

 心配してくれるのは嬉しいけど……私は本当に平気なのに。

 本当の事を言葉にすると、新さんはまだ怪しそうにしながらもこう言った。

「そうか。……だが、教室まで送る。」

「え? ……そ、そんなの悪いですよ!」

 一瞬反応が遅れたけど、そうやってしっかりと返す。

 新さんは三年生だから、教室の階が違うはず。