……っ、何かやらかしてしまったか……?

 そう考えて追及しようとしたけど、栞はそのタイミングで勢いよく顔を上げた。

 栞は笑顔を見せ、ゆっくりと言葉を紡ぎだす。

「新さん、ありがとうございます。私のことをそこまで考えてくださって。」

 そこまで言って、今度は申し訳なさそうにしゅんと肩を落として栞は言葉を続けた。

「ごめんなさい。頼れって新さんが言ってくださっていたのに、頼れなくて。こんな事言ったら、きっと迷惑になるって思っていたので……。だから言えなくて……本当に、ごめんなさい。」

 泣きそうな顔でそう訴えてくる栞を見ていられなくて、頭を優しく撫でる。

 分かってる。お前は人一倍優しいから、言えないかったんだろ?

 だからそんな……泣きそうな顔しないでくれ。

「お前の気持ちは分かってる。だからこそ……今度からはちゃんと俺に言ってくれ。」

 他愛ない話をする時のように、辛い事も全て言ってくれ。

 栞の瞳をまっすぐに捉えてそう言うと、栞は一瞬はっとしたような表情になり、すぐに笑顔を向けてくれた。