こんなこと、栞に知られたら……きっと嫌われるだろうな。

 だから今は……そう思われていたほうが、都合が良い。

 その時、栞がごしごしと涙を拭っていることに気付き、咄嗟に手を伸ばした。

「こら。栞、腫れるぞ。」

 今は眼鏡を取っていて、少しだけ雰囲気が違うが可愛い栞なのに変わりはない。

 腫れるのは可哀想だ。

 俺はそう思い、栞の涙をそっと拭ってやる。

 そうやって栞をじっと見つめていると、栞から名前を呼ばれた。

「あ、新さん……。」

「どうした?」

 突然の呼びかけに一瞬だけ戸惑ったが、すぐに平静を装って尋ねる。

 何か心配事か?それとも、さっきのことか?

 勝手にそんな考えを膨らませ、栞の言葉を待つ。

 静かにじっと待っていると、あろうことか栞がこんなことを口にした。

「あの……私のこと、嫌だって、面倒だって……思ってないですか……?私は……新さんに迷惑ばかりかけちゃう、面倒な女で……だから、その……。」

 たどたどしい口調で一生懸命言葉を紡いでいる栞。

 俺はその言葉に、ある違和感を覚えた。