栞は例外だが、普通ならこんなあっさりと許せるわけがない。

 栞がいなければ、こいつをもう一回ボロボロにしてやるつもりだったが……まぁ、仕方がない。

 俺はそれだけを吐き捨て、栞を連れて自分の部屋へと戻った。



 自分の部屋であることを確認してから、栞を近くのソファに座らせる。

 やはり、震えているな。

 微かだが体が小刻みに震えていて、瞳は揺れているように見える。

 俺も栞の隣に座り、頭をゆっくりと撫でた。

「よく頑張ったな、さっき。」

 来栖と対面するだけでも勇気がいることだっただろうに、しっかり受け答えもしていて……本当に凄い。

 栞は驚いたような表情を浮かべているが、ぽろぽろと涙を零しだした。

「あ、ありがとうございます、新さん。さっき、助け船を出してくれて……。」

 助け船……?あぁ、あれは助け船なんて、可愛いものじゃない。

 栞がまた傷つけられるんじゃないかという恐怖と来栖に対しての怒り、それと……醜い嫉妬と独占欲。

 それらの感情が混ざり合い、栞を一刻も早く来栖から離したかっただけだ。