まさか……あの男が謝罪に来るとは……全く思っていなかった。

 一回栞を傷つけた、最低な野郎。来栖風羽。

 栞はお人好しすぎて、怒っていないと言っていたが……俺は許すことはできない。

 栞が許しても、俺が許せないんだ。好きな女を傷つけられて許せるとか、どこの聖人だよ。

 だけどそれよりも気になったのは……栞の様子。

 来栖を見た途端に微かに震えていたし、言葉も弱々しいものだった。

 きっと来栖への恐怖心があるからだと、俺は勝手に思っている。

 そりゃあ、一回酷い目に遭わされたんだ。早々に恐怖心なんて薄れるはずがない。むしろ、トラウマになっているレベルだろう。

 だから、栞が全てを言い切ったであろうタイミングで、あいつから離した。

「もう話は終わりだろ。だったら、俺たちはもう帰る。」

 そう言って、俺は栞の許可なしに栞を抱き上げる。

 栞は状況が分かっていないのか、瞬きを繰り返していた。

 その行動さえも可愛いな、なんて考えながら、俺は来栖に言い放った。

「言っとくが、栞が怒ってなくても、俺はお前を一生許さないからな。」