建物の影から姿を見せたのは、肩で荒々しく息をしている形野さんだった。

「もう皐月、何してたの!」

「お前こそ、その人間と何してたんだよ。」

「栞ちゃんは死にかけてためいを助けてくれた命の恩人なの!そんなつっけんどんな態度取らないで!」

「取ってないけど……。」

 めいちゃんは魔力でふわふわと浮かび、形野さんのほうへと戻っていっている。

 形野さんと口論をしていて、それがなんだか微笑ましかった。

 二人とも、仲が良いなぁ……。

 私には形野さんとめいちゃんのような関係性を持っていないから、つい頬が緩んでしまう。

 でも二人が再会できたなら、私はここにいても邪魔になるよね。

 元々形野さんを探してめいちゃんと引き渡す予定だったし、ここで結果オーライだ。

 めいちゃんとバイバイするのは嫌だけど、きっと形野さんは私がいることをよく思っていないだろう。

 だったら早くここから去ったほうが、良いよね……。

 私は名残惜しくも踵を返し、校舎のほうへと戻ろうとする。

「なぁ……人間。」

 だけど形野さんの声が後ろから聞こえて、思わず立ち止まった。