『来栖さん……やめて、ください……。』

 あの諦めたような表情と僕に助けを求めようとしていた表情が、脳裏に焼き付いて離れてくれない。

 地味女が神菜に似てるって……どうかしてる。そんなわけ、絶対にない。

 僕は神菜を心から愛している男なんだ。神菜が魔術でどんな姿形になろうとも、見つけ出せる自信がある。

 神菜の泣き顔は、正直のところ見たことはない。

 ……だけど、諦めたような表情は何度も確認できた。

 画面越しでも分かるほど、儚い雰囲気を醸し出して諦めの表情を浮かべている時がある。

 何が神菜をあそこまでさせているんだろう?何が神菜を苦しませているんだろう?

 そんな疑問が次々と浮かび、僕は次第にこう思うようになった。

 ”神菜を悲しませないような、誇れる男になる。”って。

 だからこれまで努力して、我慢もたくさんして、立派な男になるためだけに頑張ってきた……のに。

「どうして、なんだろう……っ!」

 あの男……神々新にだけは、勝てたことが全くない。

 神々家は確かに、どの種族よりも能力が高く優れているけど……神々新みたいな完璧人間は、初めてらしい。