『……っ、あ、らた……さん……っ。』

 あの時の栞の怯え切った表情を思い出して、無意識に舌打ちをする。

 きっと栞にあんな表情をさせたのは……あいつだ。

 来栖風羽。あいつは何故だか知らないが、俺を目の敵にしている。

 ……だがそんな事、今はどうでもいい。

 問題はあいつらの処分だ。

 栞はいいと言ったが、そんなの俺が耐えられるはずがない。

 好きな女をあんな目に遭わせた奴には、それ相応の罰が必要だ。

 それに調べると、栞はあんな怖い目に遭うまでいじめに遭っていた事を隠していた。

 しかも相当、身体的にも精神的にも来そうなやつを。

 どうしてあの場で栞は言ってくれなかった? 言ったら俺は何でもしてやるのに。

 ……いや、違う。

 俺が頼りがいがなかったから、必死に隠そうとしていたんだろう。

 この前だって、首元の跡の事を言ったらあからさまに表情を曇らせたし、そこまでしてバレたくなかったと考えられる。

 ……そんな自分が、不甲斐ない。

 栞は優しいから、きっと復讐なんて事考えてはいない。