前に新さんと一緒にご飯を食べていた時に新さんが「人の手作り久しぶりに食べたな。」なんて零していたから、少しだけ気になっている。

 余計なお世話だし、デリケートな話だと思うから聞かないほうが良いのは分かっている。

 うーん……でも、人の手作りが久しぶりって、どういう意味なんだろう……。

 だけどこういうのは私から聞いちゃダメ、だよね……。

「栞、百面相してどうした?」

「……わ、私、そんな変な顔してましたか?」

 知らず知らずのうちに考えに耽りすぎていたことに反省する。

 それにやっぱり……そういうのは聞くべきことじゃない。

 私は一人でそう完結させ「何でもないですよ。」と笑って見せた。

 こんな些細な問題に新さんに心配をかけたくないもんっ。これで良いんだ。

 そうやって無理やり思っていたけれど、新さんの不安そうな表情には気付かなかった。



「栞、そろそろ俺は帰るから、気をつけるんだぞ。」

 少しだけ新さんと談笑した後、そう言いながら新さんはソファから立ち上がった。

 いつも帰り際、新さんは気をつけろと言ってくれるけど……一体何に気をつければいいんだろう?