──『8月10日、空いてる?』


そんなメッセージが届いたのは、夏休みに入って一週間が過ぎた頃だった。


久しぶりのやり取りにドキドキしながら、返信をする。

──『空いてる!』
──『よかった。海、好き?』
──『うん! でも、泳げないけど……』
──『俺がいるから大丈夫』


だから、海いこ。


そのメッセージによろしくお願いしますと返事をして、ぺこりと頭を下げたかわいいクマのスタンプを押して、はたと気付く。


これってもしかして、初デートってやつでは? と。









「おはよ」


約束の日は、あっという間にやって来た。
待ち合わせは、私の最寄り駅。


白い無地のシャツに、黒いスキニー。シンプルな服装にゴールドのアクセサリーが眩しくて、すごく似合っていて、ちょっとだけ目を逸らしてしまう。


「……おはよう!」

「何か、久しぶりな気がする。山本とちゃんと話すの」


こんなふうに面と向かって話すのは、あの勉強会ぶりだなあ。なんて考えていたら、阿久津くんも同じことを思ったのか、口元に微笑みを乗せながらそう言った。


期末テストの後は授業がほとんど無い。

お昼休みの時間も、放課後の水やりの時間も無くなってしまったまま、夏休みになってしまったのだ。


だから、誘ってもらえて嬉しかったし、この日をすごく楽しみにしていた。

夏休みの宿題なんか、ちっとも手が付けられないくらいに。


「げ、元気だった?」

「ふ、何その質問。山本は?」


質問を質問で返した阿久津くんの長い指が、私の肩にかかるビニールをつつく。