六月もあと一週間で終わると言うのに、雨は止まず、だけど気温だけは上がっていく。


じとじとと湿っぽく蒸し暑いそんな日は、駅から学校までの距離を歩くのも億劫で、すでにしんなりと元気を無くしてしまった前髪に眉を下げた。


雨の日でも草臥れることのない強固な前髪を手に入れたい……。そんなことを考えながら視線を上にあげるようにして己の前髪を睨んでいると、パタパタと駆け寄るような足音が近づいてくる。


「だーっ! 暑っつい!」


冷たい空気に飛び込むようにしてやって来たのは、前下がりのショートが良く似合う女の子。


「おはよ、里香ちゃん」


前の席の子の椅子にドカッと座り、私の机の上で項垂れる親友を、持っていたノートをうちわ代わりに扇いであげた。


彼女は峯岸里香(みねぎしりか)。

一年生からの親友で、ここ最近は登校すると、クーラーが直風の私の席まで真っ直ぐにやって来るのが恒例となっている。