久宝家という、立派な家に生まれてきて、顔面だって十分、才にも恵まれているのに……満たされていない、毎日が憂鬱だった。


それから成長するにつれて、『人が幸せそうな顔をする』それが嫌と誰にも気づいてもらうことはできぬまま捻くれて行った。


だけれど、唯一の救いは美都だった。


段々と人間不信というか……女嫌いというか、そんな俺が唯一心を許せた女の子だった。


彼女はふわふわしていて、純粋で……それなのに、努力を惜しまずに勉強もできる、素晴らしい子だった。


そして初めて、この子は絶対に幸せであって欲しい、そう思えた。


そう思えば思うほど、美都のことを考えるほど満たされるようになったのはいつのことだろうか。


だけれど、いつのまにかまた満たされない日々が幕を開けた。


『奏くん……?なんだか、いつもより疲れてるね』