回避の一手を決めようとした騎士だったが、不自然に動いた木の根に足を取られて体勢を崩すのを、オークは見逃さなかった。
振りかざした腕にありったけの力を込めたオークは、不敵に笑い雄叫びを上げる。
「……っ!」
誰もが絶望を感じた一瞬、騎士の横を銀が駆けた。
一閃。
ミア達を襲いかけていたオークはけたたましい悲鳴をあげて、腕を落とされた。
「俺の仲間に手を出したこと、後悔しろ」
振り下ろした剣の光と、荒々しく燃ゆるようにリヒトのシルバーブロンドの髪が瞬いた。怒りに染まった彼の声は、悲鳴を上げるオークを黙らせる程の力と圧があった。
彼が部下を庇うようにしながら背を向けて退く姿を見たオークは、最期の足掻きというように突進してくる。
オークの怒りが地面を大きく揺らす中、静かに風が駆け抜けた。
「土魔法を駆使して、僕らの背後を奪い攻撃してきたのは評価してあげるよ。ただ……相手が悪かったね。反省は、あの世でどうぞ?」
いつの間にかオークの背後に回っていたユネスが勝ち誇った笑みを浮かべながら軽く剣を振るい留めを刺すと、もぬけの殻になったオークの身体はその場で倒れた。



