呆気ないと言ってはいけないと分かってはいても、この戦いに負目は端からなかったのだとようやく理解する。
何がともあれ方が着いたと胸を撫で下ろしながら、皆の元へと駆け寄ろうとした――その時だった。
「グォオオオオオ!!!」
ミアを覆い被さるように影を落として突如現れたのは、ゴブリン達よりも大きな体を持つ一匹のオーク。
足に木の根が絡みつき、動きを封じられたフェンリルが逃げろと吠える。
一体どこから……っ?!
状況を理解する暇を与えず、棍棒を振り下ろしてくるオークに逃げようとするが、咄嗟に動ける反射神経をミアは持ち合わせていない。
痛みを覚悟したその時、大地を力強く蹴ってミアとオークの間に入り込んで来た一人の騎士に寄って、転がるようにその場から脱する。
先程ミアがいた場所からは、土煙が立ち上がる程の威力でオークが棍棒を地面に叩きつけていた。
「立って!」
騎士の掛け声に合わせて立ち上がり、周りを気にせずに我武者羅に走る。しかし今度は戦闘体勢が整えられずに、ミアを庇い遅れを取ってしまった騎士が標的となる。
相棒の魔獣を呼ぶが、緊急事態の備えはまだ彼らには身についていない。剣を構えるよりも先に、オークが距離を詰めてくる。



